
モルテーニ(Molteni&C)は、イタリアを代表するコンテンポラリーな高級家具ブランドで、「建築と一体になった住空間」を丸ごと提案するトータルインテリアメーカーとして世界的な地位を築いています。
歴史とブランドの規模

モルテーニの始まりは1934年、ミラノ北方の家具産地ジュッサーノでアンジェロ・モルテーニが木工家具工房を開いたことにさかのぼります。
高品質な木製家具が評判を呼び、戦後は工房から工場へと急成長し、1940年代後半には従業員数60名を超えるメーカーへと発展しました。
1960年代にはドイツ製フラットプレス機などを導入し、工業生産規模での家具づくりに舵を切ることで、精度と品質を両立した大量生産体制を確立します。
1970年代以降はコントラクト事業にも参入し、ホテルや公共施設、オフィスなどの大型案件を手掛けることでグローバルに存在感を高めました。
現在はモルテーニ&Cを中心とするモルテーニグループとして、2023年にはグループ売上約4億7,500万ユーロ(約800億円)規模に達し、世界トップクラスの売上を誇る家具企業となっています。
デザインの特徴と世界観

モルテーニのデザインは、「シンプルかつシャープ」でありながら「温かみ」も併せ持つモダンスタイルが軸になっています。
直線的でミニマルなラインを基本としつつ、近年は流れるような曲線や丸みを帯びたフォルムを取り入れ、視覚的な柔らかさと包容力を感じさせるコレクションへと進化しています。
素材面では、突板や無垢材などの高品質な木材に加え、ガラス、金属、ストーン、ファブリック、レザーなどを組み合わせ、建築的ディテールを強く意識したプロダクトが多いことが特徴です。
ジオ・ポンティをはじめとするモダニズムを代表する建築家・デザイナーたちとの協働や復刻プロジェクトを通じ、「ヘリテージとコンテンポラリーをつなぐブランド」としての立ち位置も明確にしています。
コレクション構成とプロダクトの魅力

モルテーニ&Cは、ソファ、チェア、テーブル、ボード、クローゼット、キッチン、アウトドア家具までを手掛けるフルレンジブランドです。
リビングでは、ゆったりとした奥行と低めのプロポーションを持つソファや、スリムなフレームのセンターテーブル、薄い天板と繊細な脚部が特徴のダイニングテーブルなどが代表的なアイテムです。
収納・クローゼット分野では、壁一面を覆うシステム収納やウォークインクローゼットが得意領域で、建築と一体化するミニマルな意匠と、高い機能性・カスタマイズ性が評価されています。
2020年代にはブランド初の本格的なアウトドアコレクションも展開し、ランドマークコレクションなど、屋外でも室内と同等の快適性とエレガンスを追求したシリーズを打ち出しています。
これらは、柔らかく包み込むようなフォルムや自然素材を想起させるテクスチャー、淡いアースカラーを用いることで、建築と調和しつつ空間全体に穏やかなムードを生み出すことを狙っています。
クリエイティブディレクションと建築的アプローチ

2016年以降、ベルギー人建築家ヴィンセント・ヴァン・ドゥイセンがモルテーニ&Cのクリエイティブディレクターを務めており、彼の監修のもとブランド全体の世界観が統合されています。
ヴァン・ドゥイセンの特徴である「静謐で建築的なミニマリズム」と、イタリアらしい豊かな素材使いが組み合わさることで、厳格さと温度感が両立したインテリアが生まれています。
製品単体だけでなく、フラッグシップストアや展示空間そのものも“ひとつの建築作品”としてデザインされている点が、モルテーニの大きな差別化ポイントです。
日本での展開と評価

日本では2010年からアルフレックスジャパンがモルテーニ&Cの取り扱いを開始し、2015年前後に東京・南青山に旗艦店をオープンしたことで、本格的なブランド展開が始まりました。
南青山の新フラッグシップ「パラッツォ・モルテーニ東京」は、ヴァン・ドゥイセンによる建築で、日本の文化と美意識を取り入れた彫刻的な外観と、住空間を思わせる上質なインテリアが特徴です。
店内はリビング、ダイニング、ベッドルーム、ウォークインクローゼットなどをリアルな住空間スケールで構成し、家具単体ではなく「モルテーニが考えるライフスタイル」を体験できる構成になっています。
日本の顧客からは、ミニマルでありながらどこか情緒的な雰囲気を持つ点、建築・内装と溶け合うシステム収納の完成度、そしてブランドとしての一貫性の高さが支持されていると伝えられています。
まとめ:モルテーニという選択肢

モルテーニの家具は、「単体の名作家具」というより、「住まい全体の設計思想」に魅力を感じる人に向いたブランドだと言えます。
長年の木工技術と工業化による高い品質管理、モダニズムの継承と現代的な解釈、そして建築的視点から組み立てられたコレクション構成により、ハイエンドな住空間をトータルに作り込める点が最大の強みです。
日本の高感度なインテリア市場においても、「静かだが圧倒的な存在感を持つブランド」として、今後も重要なポジションを占め続けると考えられます。