【徹底解説】フリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)家具の特徴について
ブランドの歴史と背景
フリッツ・ハンセンの歴史は1872年に始まります。創業精神に富んだナクスコウ出身のキャビネット職人、フリッツ・ハンセンが通商権を取得したことから始まります。1885年は重要な年となりました。家具製造会社を立ち上げ、2年後にはコペンハーゲン中心街のクリスチャンハウンに製作所を立ち上げ、確固とした成功に持ち込みました。
1872年に創業したフリッツ・ハンセンは、アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルム、ハンス・J・ウェグナーといった先見性あふれるデザイナーとともにデンマークデザインの伝統を築き上げてきた家具ブランドのひとつです。このように、フリッツ・ハンセンは150年以上の歴史を持つデンマークの老舗家具ブランドとして、北欧デザインの発展に大きく貢献してきました。
フリッツと息子クリスチャンは品質水準を高め、その後その品質の高さがフリッツ・ハンセン製品の特徴となっています。創業から現在に至るまで、一貫して品質にこだわり続けてきたことが、同ブランドの最大の特徴といえるでしょう。
デザイン哲学と理念
フリッツ・ハンセンの製品は、時の試練に耐え、生涯にわたって高いクオリティが楽しめるようデザインされています。一つひとつが素材の美しさを引き立て、丁寧に考え抜かれたディテール、一流のクラフツマンシップ、最高級の素材とともにつくられています。
そこにあるだけで空間の美しさを引き立てる、アイコニックな家具をつくり続けるフリッツ・ハンセンの製品は、時の試練に耐え、生涯にわたって高いクオリティが楽しめるようデザインされています。これは、単なる機能性だけでなく、美的価値を重視するフリッツ・ハンセンのデザイン哲学を表しています。
審美性・機能性ともに妥協しない家具づくりにより、北欧デザインの代名詞的ブランドにまで登りつめた。美しさと実用性を両立させることで、真に価値ある家具を生み出し続けています。
技術革新と製造技術の特徴
フリッツ・ハンセンの大きな特徴の一つは、革新的な製造技術への取り組みです。特に成形合板技術においては、業界のパイオニア的存在として知られています。
アルネ・ヤコブセンがスチーム成型合板の可能性を探る中で生まれましたセブンチェアは、この技術革新の象徴的な存在です。従来の木工技術では不可能だった複雑な曲面を、スチーム成型合板技術により実現しました。
この技術により、従来の椅子では考えられなかった軽量性と強度を両立させることが可能になりました。また、大量生産にも対応できるようになったため、デザイナーズ家具でありながら比較的手頃な価格での提供が実現しています。
素材についても、フリッツ・ハンセンは常に最高品質のものを使用することで知られています。木材は厳選された北欧産のものを使用し、レザーやファブリックについても耐久性と美しさを兼ね備えた最高級品のみを採用しています。
代表的なデザイナーとの協業
フリッツ・ハンセンの成功は、優秀なデザイナーとの長期的な協業関係にあります。中でも最も有名なのは、アルネ・ヤコブセンとの関係です。
アルネ・ヤコブセンとの協業
アルネ・ヤコブセンは、フリッツ・ハンセンにとって最も重要なデザイナーの一人です。彼がデザインした数々の名作椅子は、現在でもフリッツ・ハンセンの主力商品として世界中で愛され続けています。
Arne Jacobsen designed the Series 7™ chair in 1955、発売から60年以上愛され続けるセブンチェアは、フリッツ・ハンセン社を代表するアイテムであると同時に北欧家具のアイコン的存在です。
アルネ・ヤコブセンは、コペンハーゲンのSASロイヤルホテルのロビーとレセプションエリアのためにエッグチェアをデザインしました。家具を含めたホテルのあらゆる要素についてデザインを任されることは、ヤコブセンにとってデザインと建築の統合という自らの理論を実践に移す絶好の機会でした。
その他のデザイナーとの協業
アルネ・ヤコブセン、ポール・ケアホルム、ハンス・J・ウェグナーといった先見性あふれるデザイナーとともにデンマークデザインの伝統を築き上げてきたように、フリッツ・ハンセンは多くの著名デザイナーと協業してきました。
ポール・ケアホルムによるPKシリーズは、スチールと革、または籐を組み合わせた独特なデザインで知られており、モダンでありながら温かみのある作品群として高く評価されています。
製品ラインナップの特徴
フリッツ・ハンセンの製品ラインナップは、椅子を中心としながらも、テーブル、照明、アクセサリーまで幅広く展開されています。
椅子・チェアの特徴
フリッツ・ハンセンといえば、まず椅子が思い浮かぶほど、同ブランドの椅子は世界的に有名です。
セブンチェア(Series 7) アルネ・ヤコブセンによりデザインされたセブンチェアは、フリッツ・ハンセン社を代表するベストセラーであると同時に、家具の歴史においてアイコン的存在の椅子でもあります。
セブンチェアの特徴は、その軽量性と強度にあります。成形合板技術により、わずか4.5kgという軽さでありながら、十分な耐久性を持っています。また、積み重ねが可能なスタッキング機能も備えており、実用性にも優れています。
エッグチェア ほぼ垂直面と水平面だけで構成された建物とは対照的な彫刻のようなエッグチェアは、ヤコブセンのトータルデザインの傑作として知られています。
エッグチェアは、その名の通り卵のような形状が特徴的で、包み込まれるような座り心地を提供します。360度回転する機能も備えており、リラックスチェアとしての機能性も抜群です。
アントチェア(3101) 3101アリンコチェア”フロントパディング仕様”が世界同時デビューしたように、アントチェアも継続的に改良が加えられています。
アントチェアは、セブンチェアの前身となった椅子で、より大胆な曲線美が特徴です。蟻のような形状から「アントチェア」と呼ばれるようになりました。
テーブルの特徴
ストックホルムのセルゲル広場で設計されたラウンドアバウト(環状交差点)のスーパー楕円にインスピレーションを得てつくられたといわれる「スーパー楕円テーブル(B612)」など、フリッツ・ハンセンのテーブルも独創的なデザインで知られています。
フリッツ・ハンセンのテーブルは、椅子と同様に機能性とデザイン性を両立させたものが多く、特に天板の美しい仕上げと、構造的な美しさを持つ脚部のデザインが特徴的です。
照明・アクセサリー
バリエーション豊富な照明や、ひとつひとつ丁寧に作られたインドアあるいはアウトドア向けの家具をぜひご覧くださいとあるように、フリッツ・ハンセンは照明器具やアクセサリーも展開しています。
これらの製品も、家具と同様にデザイン性と機能性を重視して作られており、空間全体をトータルでコーディネートすることが可能です。
品質管理と持続可能性
フリッツ・ハンセンの製品は、厳格な品質管理のもとで製造されています。デンマーク本国の工場では、熟練した職人たちが一つひとつの製品を丁寧に仕上げており、大量生産でありながら手作りのような品質を保っています。
また、近年では環境への配慮も重要な特徴の一つとなっています。持続可能な森林から調達した木材の使用、リサイクル可能な素材の採用、製造プロセスでの環境負荷軽減など、様々な取り組みを行っています。
世界的な展開と影響力
現在、約2,000箇所の販売拠点を通じて世界85カ国以上で販売され、デザインをこよなく愛する人々に卓越したコレクションを届けています。
フリッツ・ハンセンの影響力は、単なる家具メーカーの枠を超えています。同ブランドの製品は、世界中の美術館や文化施設に展示されており、デザイン史における重要な位置を占めています。
また、多くの建築家やインテリアデザイナーが、プロジェクトにフリッツ・ハンセンの製品を採用しており、高級ホテル、オフィス、住宅など、様々な空間で使用されています。
価格帯と市場での位置づけ
フリッツ・ハンセンは、高級家具ブランドとしての位置づけにありながら、比較的手が届きやすい価格帯の製品も提供しています。これは、効率的な製造技術と大量生産により実現されているものです。
セブンチェアなどの主力商品は、デザイナーズ家具としては中程度の価格帯にありながら、その品質と耐久性を考慮すると非常にコストパフォーマンスに優れていると評価されています。
現代における意義
「たった1つの家具が部屋や建物全体を美しくする」という理念のもと、フリッツ・ハンセンは現在でも新しいデザインに挑戦し続けています。
伝統的な北欧デザインの価値を守りながら、現代のライフスタイルに合わせた新しい提案を続けており、これが同ブランドの現代における大きな特徴といえるでしょう。
まとめ
フリッツ・ハンセンの家具は、150年以上の歴史と伝統に裏打ちされた品質の高さ、革新的な技術力、優秀なデザイナーとの協業関係、そして美的価値と実用性の両立という特徴を持っています。
単なる家具メーカーではなく、北欧デザインの文化を世界に発信し続ける文化的な存在として、今後もその影響力を拡大していくことでしょう。現代においても、フリッツ・ハンセンの家具は、質の高いライフスタイルを求める人々にとって、不可欠な存在となっています。