日本人に人気が高い高級家具ブランド3選!その理由
はじめに:高級家具への憧れと現実
高級家具ブランドへの関心は、日本において着実に高まっています。豪邸を建てる富裕層だけでなく、質の高いものを長く使いたいという価値観を持つ一般消費者の間でも、高級家具ブランドへの注目度は年々上昇しています。
日本のインテリア業界において、富裕層を顧客に持つ建築家やインテリアコーディネーターが必ずチェックするハイエンドなブランドがいくつか存在します。その中でも、日本での販売実績や認知度、そして実際の購買動向から見て、特に人気が高い3つのブランドがあります。それが「カッシーナ(Cassina)」「ポルトローナ・フラウ(Poltrona Frau)」「B&B Italia(ビー・アンド・ビー・イタリア)」です。
この3ブランドに共通するのは、いずれもイタリアの高級家具メーカーであるという点です。日本ではイタリアブランドがラグジュアリー家具の中心となっており、その洗練されたデザインと卓越した職人技術が、日本の富裕層や家具愛好家から絶大な支持を受けています。
第1位:カッシーナ(Cassina)- 家具界の王様

圧倒的なブランド力と知名度
カッシーナは、日本における高級家具ブランドの中で最も高い知名度とブランド力を誇ります。高級家具ブランドとしては世界でもNo.1の呼び声が高く、インテリアに少しでも興味がある人なら必ず名前を聞いたことがあるでしょう。
1927年にイタリア・ミラノ近郊のメーダで創業されたカッシーナは、90年以上の歴史の中で、モダン家具の最高峰として君臨し続けてきました。その製品は単なる家具の域を超え、ニューヨーク近代美術館(MoMA)をはじめとする世界中の美術館に収蔵されています。
日本での成功の歴史
カッシーナの日本進出は1980年に始まりました。株式会社カッシーナ・イクスシーが設立され、イタリア本社の正規輸入代理店として、世界で唯一ライセンス生産を行うことを許された特別な存在となりました。2008年には群馬県伊勢崎市に工場が開設され、日本国内でもカッシーナの家具が製造されるようになりました。
しかし、順風満帆だったわけではありません。2007年12月期に103億円あった売上高は、わずか4年で半減し、2010年12月期には3期連続で経常赤字を記録するという深刻な業績不振に陥りました。それを店舗閉鎖や人員削減などのリストラで乗り切り、2013年12月期には売上高が前期比17.8%増の62億5700万円まで回復。営業利益と経常利益、当期純利益はいずれも4億円で、前期に比べて2倍超と大きく増やしました。
アベノミクスで懐が暖かくなった資産家層が、広く新しいリビングに見合う家具にカッシーナを選んでいる様子がうかがえます。現在では、100万円前後のソファがよく売れており、富裕層の間で確固たる地位を築いています。
2大コレクションの魅力
カッシーナが日本で人気を博している最大の理由は、その独自の2大コレクション戦略にあります。
イ・マエストリ・コレクションは、ル・コルビュジエやフランク・ロイド・ライト、チャールズ・レニー・マッキントッシュなど、20世紀を代表する巨匠建築家たちの作品を復刻したシリーズです。1964年にル・コルビュジエがデザインした4種の家具を製造・販売する独占契約を結んだことから始まったこのコレクションは、歴史的名作を現代に蘇らせています。
全てのイ・マエストリ・コレクションには、原作者のサインや1点ものの証明であるシリアルナンバーがしっかりと刻まれており、リプロダクト品では決して味わうことのできない本物を持つ喜びを存分に味わえます。
一方、コンテンポラリー・コレクションは、現代の著名建築家やデザイナーとのコラボレーションによる最新作品のシリーズです。フィリップ・スタルクやピエロ・リッソーニなど、現代を代表するデザイナーたちとの協働により、常に新しい提案を続けています。
なぜカッシーナは高価なのか
カッシーナの家具は決して安くありません。ソファは2〜3人掛けで100万円から200万円台、場合によってはそれ以上の価格になることもあります。日本のブランド家具と比べて倍以上の価格で販売されることも珍しくありません。
しかし、この高価格には明確な理由があります。イタリアは世界的なデザイン王国であり、世界中の一流デザイナーが自然とミラノを目指します。そのイタリアで最高峰とされるカッシーナのブランド力は、単なるプレミアムではなく、厳選された最高品質の素材、熟練職人による手仕事、デザイナーへのライセンス料、そして何よりも時間を超えて価値を保ち続ける普遍的なデザインを反映したものです。
実際、良好な状態で保管されたカッシーナの家具は、セカンドハンド市場でも高値で取引されます。特にヴィンテージのイ・マエストリ・コレクションは、骨董品としての価値も持ち合わせており、投資対象としても注目されています。
第2位:ポルトローナ・フラウ(Poltrona Frau)- レザーの最高峰

イタリアの伝統と革新
ポルトローナ・フラウは、1912年にイタリアで設立された長い歴史を持つメーカーです。100年以上の歴史を通じて、最高品質のレザー家具を作り続けており、「レザーの最高峰」として世界中で認められています。
日本では大塚家具が正規代理店を務めており、近年特に注目を集めているブランドです。富裕層を多く顧客にする建築家やインテリアコーディネーターが必ずチェックするハイエンドなブランドとして、確固たる地位を築いています。
日本で人気の理由:エレガンスと実用性の融合
ポルトローナ・フラウが日本で人気を集める理由は、そのエレガントなデザインと極上の座り心地にあります。特に、2009年に誕生した「アーチボルド」は、ブランドの新たなアイコンチェアとして圧倒的な人気を誇るロングセラーモデルです。
背もたれからアームにかけた美しいドレープ、華奢な脚、エレガントなたたずまいと極上の座り心地を兼ね備え、日本の住宅にもフィットするサイズ感が高く評価されています。価格は1脚あたり124万3000円からと決して安くはありませんが、その価値を理解する顧客層から熱烈な支持を受けています。
ペッレ・フラウ:独自開発のレザー
ポルトローナ・フラウの最大の特徴は、独自開発の「ペッレ・フラウ」と呼ばれる最高品質のレザーです。このレザーは、厳選された原皮を21もの工程を経て仕上げられており、柔らかさ、耐久性、発色の美しさのすべてにおいて最高水準を実現しています。
使い込むほどに味わいが深まり、経年変化そのものが価値となるペッレ・フラウは、「一生もの」を求める日本の富裕層にとって理想的な素材です。また、環境に配慮した製造プロセスを採用しており、サステナビリティへの関心が高まる現代において、その姿勢も評価されています。
格式高い空間への採用実績
ポルトローナ・フラウの家具は、イタリア上院議場や大統領府、世界中の高級ホテルのラウンジなど、格式高い空間で採用されています。フェラーリやマセラティなどの高級車のインテリアにも使用されており、そのブランド力は自動車業界にまで及んでいます。
こうした実績が、日本の富裕層にとって「信頼できる最高級ブランド」としての認識を強めており、豪邸のインテリアに採用される重要な理由となっています。
第3位:B&B Italia(ビー・アンド・ビー・イタリア)- モダンデザインの革新者

革新性を追求するDNA
B&B Italiaは、1966年にピエロ・アンブロジオ・ブスネリによって設立されました。創業時より革新性のある製品づくりにこだわり、最先端の技術を取り入れながら数々の家具を発表してきました。
同社の特徴は、デザインの高さはもちろん、素材の研究開発や品質管理を徹底している点にあります。自社で「CR&S」と呼ばれる研究開発センターも運営しており、ポリウレタンフォームの革新的な使用法を開発するなど、技術革新を続けています。
日本での評価:現代的なライフスタイルへの適応
B&B Italiaが日本で人気を集める理由は、その現代的でミニマルなデザインが、日本の都市型住宅に非常にマッチする点にあります。カッシーナやポルトローナ・フラウが伝統と格式を重視するのに対し、B&B Italiaはより現代的で都会的な印象を与えます。
代表作である「チャールズ」ソファや「エダマメ」ソファは、シンプルでありながら存在感があり、モダンなインテリアを好む富裕層から高い支持を受けています。特に、若い世代の富裕層や、IT企業の経営者など、現代的なライフスタイルを好む層に人気があります。
世界的デザイナーとのコラボレーション
B&B Italiaは、アントニオ・チッテリオ、パトリシア・ウルキオラ、深澤直人など、世界的な建築家やデザイナーとの積極的なコラボレーションで知られています。特に、日本人デザイナーである深澤直人を起用したことは、日本市場において大きな話題となり、ブランドの認知度向上に貢献しました。
深澤直人がデザインした「パピリオ」シェルチェアは、日本の美意識とイタリアのクラフトマンシップが融合した傑作として、日本の消費者から特に高い評価を受けています。
コンパッソ・ドーロ賞の常連
B&B Italiaの製品は、イタリアの権威あるデザイン賞「コンパッソ・ドーロ」を数多く受賞しています。この受賞歴が、デザインの質の高さを客観的に証明しており、日本の目の肥えた富裕層や建築家から信頼される理由となっています。
また、ニューヨーク近代美術館をはじめとする世界中の美術館にコレクションされており、単なる家具ではなく「芸術作品」としての価値を認められています。
なぜイタリアブランドが日本で人気なのか
これら3つのブランドに共通するのは、すべてイタリアの家具メーカーであるという点です。日本においてイタリアブランドがラグジュアリー家具の中心となっている理由は、いくつかの要因が複合的に作用しています。
デザインの普遍性
イタリアのデザインは、流行に左右されない普遍的な美しさを持っています。ミニマルでありながら温かみがあり、モダンでありながら人間的。この絶妙なバランスが、日本人の美意識にも深く共鳴します。
職人技術への敬意
日本人は伝統的に職人技術を尊重する文化を持っています。イタリアの家具メーカーもまた、世代を超えて受け継がれてきた職人技術を大切にしており、この点で日本人の価値観と一致します。手作業による丁寧な仕上げ、素材へのこだわり、細部へのこだわりは、日本の職人文化と通じるものがあります。
ステータスシンボルとしての価値
イタリアブランドの高級家具は、単なる実用品ではなく、所有者のライフスタイルや価値観を表現するステータスシンボルとしても機能します。特にカッシーナは、「家具界の王様」として認識されており、その家具を所有すること自体が一種のステータスとなっています。
投資価値の高さ
これら3つのブランドの家具は、良好な状態で保管されていれば、時間とともに価値が増す傾向があります。特にカッシーナのイ・マエストリ・コレクションや、ポルトローナ・フラウのヴィンテージ品は、セカンドハンド市場でも高値で取引されます。
日本のリユース業界においても、これらのブランドは特別扱いされており、買取価格も他のブランドと比較して著しく高くなります。このため、単なる消費ではなく、資産形成の一環として高級家具を購入する富裕層も増えています。
購入層の特徴と購買動機
富裕層の豪邸需要
これら3ブランドの主要顧客は、広大なリビングを持つ豪邸の所有者です。延床面積が200平米を超えるような大型住宅では、通常の家具では空間に負けてしまい、存在感のある高級家具が必要とされます。
建築家やインテリアコーディネーターは、こうした豪邸のプロジェクトにおいて、必ずと言っていいほどカッシーナ、ポルトローナ・フラウ、B&B Italiaの3ブランドを提案します。これらのブランドは、建築の格に見合う品格を持っているからです。
質を重視する都市部の富裕層
都市部のマンションに住む富裕層も重要な顧客層です。広さは限られていても、質の高い家具で空間を満たしたいという需要があります。特に、港区や渋谷区、世田谷区などの高級住宅地に住む富裕層は、これらのブランドを好む傾向があります。
経営者・専門職の自宅兼オフィス需要
IT企業の経営者や医師、弁護士など、自宅の一部をオフィスや応接室として使用する専門職も重要な顧客層です。クライアントを自宅に招く機会が多い彼らにとって、高級家具は単なるインテリアではなく、ビジネスツールでもあります。
カッシーナやポルトローナ・フラウの椅子に座って商談することは、相手に対する敬意の表現であり、自身のビジネスへの真剣さを示すメッセージでもあります。
価格帯と購入のハードル
これら3ブランドの家具は、いずれも高価格帯です。ソファで言えば、100万円から200万円台が一般的で、大型のシステムソファになれば300万円を超えることもあります。ダイニングテーブルとチェアのセットでも、100万円以上は覚悟する必要があります。
しかし、購入者の多くは「一生もの」として購入しており、使い捨ての安価な家具を何度も買い替えるよりも、質の高い家具を長く大切に使う方が結果的には経済的だと考えています。また、良好な状態で保管されていれば、将来的に高値で売却できる可能性もあります。
近年では、富裕層向けのレンタル家具サービスも登場しており、カッシーナの家具を月額料金でレンタルすることも可能になっています。海外駐在員などは、日本滞在中にカッシーナの家具をレンタルして使用するケースも増えており、「本国ではなかなか手が届かないブランド」として楽しんでいるようです。
結びに:高級家具がもたらす豊かさ
カッシーナ、ポルトローナ・フラウ、B&B Italiaという日本で人気の高い3つのイタリア高級家具ブランドは、それぞれに異なる魅力と個性を持ちながら、共通して「質の高い生活」を提供しています。
これらのブランドの家具を選ぶということは、単に高価なものを買うということではありません。それは、毎日の生活の中に本物の美しさと快適さを取り入れること、質の高いものを長く大切に使うという生き方を選ぶこと、そして自分自身のライフスタイルや価値観を表現することなのです。
イタリアの高級家具ブランドが日本で人気を博している背景には、単なるブランド志向ではなく、質の高いものに対する深い理解と敬意があります。90年以上、100年以上という長い歴史の中で培われてきた技術とデザインの力は、時代を超えて人々を魅了し続けるのです。
家具は人生の長い時間を共に過ごすパートナーです。カッシーナ、ポルトローナ・フラウ、B&B Italiaという選択は、その時間をより豊かで美しいものにしてくれる、最良の投資と言えるでしょう。